追悼の自主上映です。以前、
チャンネルNECOの放映を録画した、DVDを再生した。
監督今村昌平。脚本は知る人ぞ知る、後年の時代小説作家、
隆慶一郎こと池田一郎、今村昌平の共作。女優吉行和子の出演映画代表作です。

開巻劈頭からエンドマークが出るまで、喜怒哀楽の疾風怒濤である。
よく言われる「笑いと涙」なんてんじゃない、音楽で言えば、
フォークミュージックとソウルミュージックほど違う、
魂の奥底にガツンと来て、激しく感情を揺さぶられる。
社会に適応できなくて、居場所がなくて、解決を死にさえ求めてしまう、
令和の若者たちに、ぜひ、観てほしい。
舞台は九州、時代は昭和28年、主演の登場人物は四人兄弟姉妹。
長兄、長女、次男、次女。朝鮮人炭鉱夫の一家で、
親は、炭鉱事故で亡くなりました。想像を絶する、
苦難の生を生きることになります。
社会に適応できないんじゃないんです。ハナっから、
社会から疎外、拒絶されてるんです。
それでも、生きていかなければならない。自ら生を絶つなんて、
生きものの本性として、本能的にできない。じゃあどうするか。
四人兄弟姉妹の悪戦苦闘に、エールを送らない観客は、一人もいまい。
どこからどう見たって、映画『にあんちゃん』の世界は、貧しく悲惨だ。
だが、なぜか、豊かさを感得する、画面の前の僕がいる。
僕が感得した「豊かさ」の正体とは、なにか。戦後民主主義だ。
本作は、令和の価値観で言うなら、言うところのブサヨ映画だ。
だが、本作は、文部大臣賞受賞作でもある。昭和34年製作公開。
当時の日本は、官も民も、戦後民主主義の理想実現に、燃えていた。
本作では、吉行和子演じる行政職員が、その理想の火を掲げ、
無知と貧困を極める炭鉱居住区を駆け巡るのだ。頑張れ、吉行和子!
戦後民主主義とは、なんだ。人間は平等だ、貧乏はいけない、
貧乏をなくそう。それが戦後民主主義の一丁目一番地だった。
だからこそ、日本は、奇跡の戦後復興を遂げ、
一億総中流とまで謳われた、平等な社会を築き上げたのだ。
その輝かしい日本の戦後民主主義を否定する、
否定したくて堪らない、政治勢力がある。
高市早苗である、櫻井よしこである、百田百樹である。
やつらを通してはならない。令和の若者たちを、
不幸のどん底に突き落としたのは、やつらに外ならない。
吉行和子の出演映画代表作『にあんちゃん』を、観よ。
その真実が、あなたにも伝わるであろう。