司馬遼の人気作『燃えよ剣』をも凌ぐ、
新選組小説の白眉では、ないだろうか。
青春群像、なのである。坂本龍馬や高杉晋作のように、
新選組の隊士もまた、幕末という政治の季節、
青の時代を疾駆した、若人だった。

面白かったと思います。凄惨ではあるが、否、凄惨であるがゆえに。
近藤、土方、沖田ら、新選組の有名隊士が交互に主人公となり、
幕末史を繙きながら、オムニバス形式によって綴られる、新選組の光芒を歌った、
それゆえに、甘やかさも十分にある『幕末の青嵐』に、読者の多くは惹かれるだろう。
だが、僕は。無名隊士にフォーカス、
有名隊士にとっては幕末ドリームでもあった新選組の中で、
有名隊士の夢を叶える捨て駒として、
苦悩、葛藤、蹉跌する姿を描いた『地虫鳴く』に、より深い、感動を覚えた。

俺はこんなもんじゃないと、令和の日本で、鬱屈を抱えている若者に、
ぜひ読んで欲しいと思う。幕末の若者たちは、今のきみと同じだった。
彼らは、闇雲に突っ走った。闇雲に突っ走れる時代でもあった幕末、政治の季節。
そりゃ面白いに決まってる。だが、その面白さを味わうには、
命を賭けなければならない。その覚悟を、新選組副長土方歳三は、士道と呼んだ。
木内昇の新選組小説を読了し、無性に歌いたくなった。
青の時代の終わりのソウル・バラード『Tokyo-Bay Blues』。
♪~つらい夕暮れが 今日もまたやって来るぜ
月も上らぬ街じゃ 誰もがひとりだろう
すれ違う白いフリースの 胸のふくらみに
こころときめかすが 追いかけることもできずに
駅前のパチンコ屋は いつだって満員御礼
すり切れた一日の終わりに ささやかな不労所得を
赤や青のネオンの海が 寄ってらっしゃいなと
なじんだ悲しみを やさしく責め立てる
がんばればんざい 肩たたき合いながら
注ぎ足すビールの 生ぬるく泡ばかり
吹きさらしのプラットホームにゃ
風にちぎれたスポーツ新聞
サリン殺人第7サティアン 最終戦争
遅れて来た電車に われ先にと乗り込む
地獄極楽 座席確保
汚れた電車の窓に うるむ街の灯が
なんで希望と 呼べるものかよ
ああ今日も終わったという やすらぎと
ああ今日も過ぎてしまったという はかなさと
赤く熱い血が からだのなかを駆けてゆく
そんな季節は 巡って来るのだろうか
走れ いまも時なら京浜Express 東京湾の波逆巻いて
夢よ かなわぬ願いよ ほんものになれ
帰れ あの夏の日へ京浜Express 東京湾の空夕焼けて
夢よ かがやける幻よ ほんものに ほんものになれ