若く貧しい者たちが、若く貧しいがゆえに芽生えた連帯感を、
かけがえのない希望として、懸命に生きて行くー映画の骨格は、
女優吉永小百合を永遠不滅の存在にした名作、
『キューポラのある街』と同様のものだろう。
勿論、映画芸術としての完成度は、及ぶべくもないが。
娯楽作品ならではの気安さが、それはそれでうれしい。
青春映画の佳作に仕上がっている、監督野村孝。
『拳銃(コルト)は俺のパスポート』と並ぶ、
肌合いはまるで違うけど、代表作に推したい。

夜更けの通学路を、定時制高校の仲間たちが、
歩きながら自転車を転がしながら帰るシーン、
もうひとつの主題歌『寒い朝』が流れる。
♪~北風吹きぬく 寒い朝も
こころひとつで 暖かくなる
清らかに咲いた 可憐な花を
みどりの髪にかざして 今日もああ
北風のなかに 聞こうよ春を
北風のなかに 聞こうよ春を~
吉永小百合が、浜田光夫が、松原智恵子が、
2コーラスに亘って歌い継ぐ、本作白眉の名場面。
この長尺シーンを野村孝は、後退移動と横移動で鮮やかに活写する。
これほど美事な移動撮影は、僕がこれまで観てきた、
千本以上の映画作品の中で、天才木下恵介の作品以外にない。
好いなあ、すっごく好いなあ。胸が温み、涙腺が緩んじゃう。
『キューポラ』で吉永小百合の弟役を演じた市川好郎が、
本作では浜田光夫の弟役だが、
同じキャラクターで出演してるのも、好ポイントだ。
信欣三、飯田蝶子、中村是好、内藤武敏、野呂圭介、
脇を固める俳優陣の充実は、
企画プロデューサーのクリーンヒットだろう。
とまれ、本作は、日本が美しい国であった頃の映画。
戦後民主主義が、光り輝いていた頃の映画。
「美しい国、日本」を取り戻したいのなら、
戦後民主主義を復興することだよ。
映画の後半、劣悪な労働環境での就業で肺を病み、療養所に身を寄せた、
紡績工場の女工松原智恵子が、見舞いに来た吉永小百合に、
療養所の図書室で見つけた、見知らぬ定時制高校の生徒が作った詩を披露する。
ー春先の花々の芽が 深い根雪のなかに生まれるように
ぼくたちの歓びは 日々の厳しさのなかに鍛えられる
ぼくたちは今日も歌おう ぼくたちの冬 この国の冬を突き破る歌をー
いつでも夢を、だれもが夢を。それが、戦後民主主義の理想だった。
他人の痛みを、自分の痛みに。それが、戦後民主主義の情操だった。
アゲイン!日本を、取り戻せ。戦後民主主義を、取り戻せ。
♪~星よりひそかに 雨よりやさしく
あの娘はいつも 歌ってる
声が聞こえる さみしい胸に
涙にぬれた この胸に
言っているいる お持ちなさいな
いつでも夢を いつでも夢を
星よりひそかに 雨よりやさしく
あの娘はいつも 歌ってる~
あの娘とは、吉永小百合。戦後民主主義の、菩薩である。