NHK-BSで、オンエアされたのです。
舞台を観たことにはならねえよ、という叱責は御尤もです。

面白いなあ。本当に、面白い。
井上ひさしという人間は、夫として父親として、
最低の男だと思うが、劇作家としては、最高でしょう。
もう百年も経てば、近松門左衛門や河竹黙阿弥と、
並び称されるに違いない。
舞台は一度も観たことはないが、新潮社から随時刊行されていた、
井上ひさし戯曲全集は、ずっと読んでいた。
当時から悪妻の汚名高かった井上好子と二人三脚で作っていた劇が、
素晴らしいと思っていた。悪妻好子と離別してからの作品は、
僕には、つまらなかった。再婚相手の女性が、
反体制側のエリートだったからなのか、どうか。
なんか体裁ぶっててさ、迫るものが、希薄だった。自然、離れたよ。
本作は、最晩年の作品ではないだろうか。
本卦還りしているのである。出世作『日本人のへそ』、或いは、
それ以前の『ひょこりひょうたん島』のような、ドタバタ劇なのだ。
ドタバタ劇のなかに、大切なメッセージをしのばせる、
演劇への、愛である。演劇が描くのは、人生であると。
であるなら、人生への愛と、敷衍できもしよう。
関根恵子の頃からのご贔屓女優、高橋恵子が主演を務めているのも、
僕には、うれしい。演出、小川絵梨子。立派な仕事ですね、
こまつ座の芝居というよりは、つか劇団の芝居のようで、
真情溢るる軽薄さが、僕の、胸を打った。