沖縄の本土復帰50年にあたり制作放送された、NHK-BSの特番。
ドキュメンタリーの再現ドラマだと、思って観ていたのだが、
中途から、これは、ビデオデータで作られてはいるが、
映画作品、だと確信した。
明らかに、映画的主題が、ある。
事象をなぞっているのでは、ない。
映画作家は、ウルトラマンを創作した沖縄出身の脚本家、
金城哲夫の心の裡へと、分け入って行く。
同郷の後輩脚本家上原正三を狂言廻しに、
脚本家自身掴みかねている、自己のレーゾンデートルへと。
俺は、誰なんだ。沖縄人とは、どういう存在なんだ。
こうした映像作品が、再現ドラマなどであろうはずがない。
映画、だ。
白眉は、言うまでもない。
円谷プロ、つまりは、心底愛した日本に、
決別せざるを得なかった、金城哲夫の、沖縄帰郷後の、
日本と沖縄の架け橋を夢見ながら、挫折、失望、
死に至るまでの、七転八倒、悪戦苦闘、である。
就中、劇中劇として表現される、
金城哲夫脚本・演出の舞台劇の稽古シーン。
主役の覇気のない演技に業を煮やした金城が自ら演じる、
薩摩藩の琉球侵攻に、最後の最後まで抗った、部族の長の絶命場面。
ー今、私には薩摩の魂胆が見えてきた
これから琉球はどうなる
薩摩の顔色をうかがい 犬の如く尻尾を振り
声も立てず 怒りもせず 只 黙って生きるだけ
哀れな世になる
いつになれば 琉球人が晴れ晴れと
手足を伸ばし 生きて行けるのか!
確信を持って、番組プロデューサーは、主役に抜擢したのだろう。
沖縄出身俳優満島真之介、渾身の演技。
薩摩を米国に、琉球を日本に、読み替えることも、可能だろう。
それに気づかない日本人がいたとしたら、そいつは、馬鹿です。
僕は、息を詰めるようにして、テレビ画面を凝視し続けていた。
こんな生真面目な作品を、今の世に問う映画作家は、誰なのか。
ウルトラマンそのままのクロージングタイトルに、
「脚本・演出 中江裕司」のクレジットが流れ、
そうか!さもありなんと、小躍りしてしまった。
感動のあまり、中江監督の出世作『ナビィの恋』まで、
U-NEXTで、再見したのです。
沖縄愛、全開である。沖縄を愛するがゆえに、
沖縄を愛する日本人であるがゆえに、日本の、
沖縄へ対する理不尽が、恥ずかしくてならぬ、
怒りを覚えてならぬ、その念いの、ありったけをぶっつけた、
映画で、ある。中江裕司『ふたりのウルトラマン』。
本土復帰50年。沖縄は、とことん、踏みにじられ続けている。