二日前の二十九日付毎日新聞朝刊に、
オウム事件犯の死刑執行を受けて、
村上春樹の寄稿「胸の中の鈍いおもり」が掲載された。
情理を尽くした名文である。さすが当代一の文学者である。
稿の中で村上春樹は、読者に問いかける。
遺族感情の問題である。妻子を殺害された夫が、
犯人を八つ裂きにしたいと訴えれば、
判決は、死刑の方向へいくらか傾くだろう。
私はこれ以上人が死ぬのを目にしたくはないと訴えれば、
判決は、死刑ではない方向へいくらか傾くだろう。と述べ、
『そのように「遺族感情」で、
一人の人間の命が左右されるというのは、
果たして公正なことだろうか?
僕としてはその部分がどうしても割り切れないでいる。
みなさんはどのようにお考えになるだろう?』。
僕は、公正ではないと考える。その上で、
人が人を裁く以上、遺族感情を斟酌することは、
致し方のないことなのではないだろうかと思う。