革命ノススメ。僕は、そう読んだ。あなたは、どうか。
戦後日本の来し方を「敗戦の否認」と「対米従属」と見定め、
両者が補完・桎梏の関係にあることを鋭利に論証してみせた
話題騒然の書、
白井聡「永続敗戦論」である。
エコノミストの水野和夫は、ストレートパンチを浴びて
マットに沈まされた気分と評した。
作家の池澤夏樹は、日本が民主国家でいられたのは、
朝鮮半島の38度線で共産化が食い止められたからだという指摘に
不覚だったと呻いた。
日本映画を見続けてきた僕には、著者のメッセージが、
戦後民主主義の擬制を撃ち抜いた
大島渚に、
戦後民主主義を真制たらしめんと苦闘した
浦山桐郎に、
日本の進路を脱米自立に求めた
今村昌平に、
それぞれオーバーラップする。若き政治学者の
強靭な知性の前に、脱帽のほかない。
本書は、第二次安倍政権発足後、時を経ずして刊行されたものであるが、
安倍政権の言動と行動、それが引き起こす国際社会のリアクションは、
空恐ろしいほどに、著者の読み筋通りの展開を見せている。
今月の3日付毎日新聞朝刊では、1面と3面を使って、
中国政府の新しい対日政策「新持久戦」を伝えている。
ぜひ本紙にあたっていただきたい。
中国は、戦勝国なのである。それを日本が否認してこられたのは、
ひとえに、米国に従属してきたから、西側の一員だったからである。
しかし、冷戦はとうに終結した。東側は、もうない。
共産主義ドミノ理論は、反古となった。38度線こそ解消しないものの、
韓国もまた、軍事国家から民主国家に変わることができた。
そして「敗戦の否認」と「対米従属」の補完・桎梏の関係に
知らぬ顔の半兵衛を決め込み繁栄を謳歌してきた、経済大国・日本には
陰りが生じた。金で買っていたアジアの盟主の座が揺らぎ、滑り落ちた。
いつまでもあると思うな米と金。
冷戦終結以降の日本には、新しい舵取りが必要だった。
だが、捨てられそうな気配を感じた妾が旦那に縋りつくように、
日本は、身も世もなく対米従属を深める。小泉内閣、そして、安倍内閣。
高まる国民の不安を解消するため、安倍内閣は、タカ派路線を打ち出した。
バカじゃね。タカ派路線って、国際社会では戦前回帰と見なされる。
自由と民主主義の価値観を共有する「価値観外交」で、
日米お仲間、中国そうじゃないもんねとやるつもりが、
墓穴を掘ってるんだから、その夜郎自大ぶりに唖然とさせられる。
石破発言も、籾井発言も、国際社会は耳にしているのだよ。
こんな妄言は、自由と民主主義に対する挑戦にほかならない。
なぜ、政界からも、マスコミからも、安倍退陣の声が上がらないのか。
僕には理解できない。日本が、世界の孤児になってもいいと言うのか。
戦さ上手の中国は、待ってましたとばかり咎め立てた。
それが「新持久戦」である。新ABCD包囲網の形成である。
戦後連綿と続く「対米従属」の保守専制政治体制の中で、
米国の要求に屈せず、辛うじて主権を行使し得たレアケースがあった。
日本国憲法を盾に、再軍備要求を躱した、
吉田茂だ。
押し付け憲法だと排撃しようとしている安倍政権とは、
同じ保守でも、洞察が違う。覚悟が違う。
この洞察と覚悟の欠如について、著者は、
戦後左翼に対してもきびしい批判の刃を向けている。
「対米従属」は、保守陣営の「敗戦の否認」を担保したが、
革新陣営の「民主・平和」もまた、それがもたらした果実だ。
果実はもちろん、米国の善意などによるものではない。
シビアな国際情勢の賜物、奇跡的に冷戦構造が日本に有利に働いたのだ。
池澤夏樹の呻吟は、まったく正しい。
とまれ、
米国に押し付けられた日本国憲法こそが、
日本の主権を米国から護る、最後の砦なのである。
ここから、始めよう。ここから、やり直そう。
敗戦のオトシマエをきっちりつけて、
押し付け憲法を、僕らのものにしようじゃないか。
本書は、ガンジーの言葉を引いて締めくくられる。
ーあなたがすることのほとんどは無意味であるが、
それでもしなくてはならない。
そうしたことをするのは、世界を変えるためではなく、
世界によって自分が変えられないようにするためであるー
著者・白井聡は、金曜官邸前に足を運んでは
「原発反対」を叫んでいるという。
世界によって変えられない自分が国民の半数を越えたとき、
世界は変えられる。あなたもぜひ。