先週、NHK-BSで、歌手加藤登紀子のインタビュー番組が放映された。
死別した夫、元全学連委員長藤本敏夫との出会いから
現在の心境までを綴った、異色にして出色のドキュメンタリーだった。
とにかく「逮捕」「出所」「娑婆」「獄中」「前科」などの言葉が飛び交い、
68年新宿騒乱、69年東大安田講堂、新宿西口フォークゲリラ、
日比谷野音コンサート等のニュースフィルムが挿入されるのだ。
私はかつて二十歳だった、それが人の一生でいちばん美しい季節とは誰にも言わせまい。
僕はアングラびいきだったので、浅川マキは熱心に聴いていたが、
加藤登紀子はほとんど聴いていない。「知床旅情」を収めたアルバム「日本情歌行」と、
タイトルは失念したが、ロシア民謡を集めたアルバムを聴いたくらいだ。
加藤登紀子のオリジナル曲など「ひとり寝の子守唄」しか知らない。
番組の中で紹介された歌の多くも、初めて耳にしたものだったが。
獄中の恋人を恋ふる「あなたの気配」、余命幾ばくもない夫への
最後のラブレターだったという「青い月のバラード」、亡き夫を偲ぶ「檸檬」、
いのち懸けの恋を生きた女のうたは、劇しく僕を揺さぶった。
就中、テレビ桟敷の僕を撃ったのは、初めての出産のときを思い返した
「君が生まれた日に」。歌詞は、こうだ。
♪~ 強くなくてもいい 熱い心を持て
幸せばかり追いかけるな 思い切り今日を生きてゆけ~
愛娘に贈ると同時に、獄中結婚した夫であり父親である男への評価であろう。
功利万能主義の世相へのレジスタンスでもある。いい女だねえ。
惚れてくれる女がいなけりゃ、男は、熱い心を持てやしない。
穏やかかつ伸びやかな話しぶりは、天稟の知性と育ちの良さを明らかにするが、
その気性は、鉄火意気地。お登紀さんの愛称も、むべなるかな。
番組の中では、NHKですものね、当然うたわれなかったが、
加藤登紀子といえば、この一曲である。では、トラで僕が。
♪~ 白い花なら 百合の花
人は情けと 男伊達
恋をするなら いのち懸け
酒は大関 心意気~
心意気を取り戻さねばならない。それは、ナオトくん支持では断じてないが、
イチローくん待望論でもないはずだ。一億総保守の情況に風穴を空けることだ。
今なぜ、政治思想犯と獄中結婚した女性の半生を取り上げたのか。
制作者の情況に対する「異議あり」に、僕もまた、呼応したいと思う。