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アフロアメリカンのコミュニスト詩人、リチャード・ライトの詩の一節に
こういうのがあります。「われを重んじよ、黒人の少年」。意味するところは、 お分かりですね。この一節を創作のバックボーンとして撮られた 日本映画があります。大島渚監督の処女作、「愛と希望の街」です。 先月末深夜、NHK-BSでオンエアされました。NHKを民営化しては、なりませんぞ。 大島渚。彼の不在が、今日の弛緩し切った政治状況の一因となっている。 そう申し上げても、なに、かまうもんか。およそ社会にコミットしない、 いわゆる進歩的知識人とは、てんで位相が違う。烈々たる反権力の映画作家である。 彼の代表作は、初期の「青春残酷物語」、創造社時代の「儀式」、そして 若い世代にも周知の「戦場のメリークリスマス」ということになるのであろうが、 僕の見方は違う。もう、これ一本。「愛と希望の街」に尽きると頑なに信じている。 彼がこの作品を世に問うたのは、1959年、弱冠27歳の若さなのだ。 この頃の日本映画人の知的レベルは、めちゃんこ高かったんだね。彼自身の手になる オリジナル脚本の緊密さを見よ。うぐぐぐぐぐっ、身をよじっちゃいますよ。 作品の舞台は、当時の京浜工業地帯の片隅。知恵遅れの妹と母子家庭に育ち、 母親の靴磨きの仕事を手伝いながら、自らの進路に悩む中三の少年の物語です。 少年一家は貧しい家計の一助に、鳩の帰巣本能を利用し一羽の鳩を何度も売っている。 少年の境遇に同情したブルジョア階級の少女は、少年の力になりたいと、 鳩を買ったのをきっかけに、何くれと少年一家に尽くすのだが。 この間の、少女と少年の交流の美しさは、如何ばかりであろうか。 自分の好意を素直に受け取ってくれない少年に対し、少女は手紙を書きます。 「私は少し悲しく、少し怒っています」。少女役、富永ユキ。萌え〜。 やがて少女は、自分の家から逃げて行った鳩を、少年が再び売っているのを知り… 結末は、まあ観てください。「鳩」とは何か。「鳩を売る」とはどうゆうことか。 一切の妥協のない、厳しい階級意識に貫かれた、プロパガンダ映画である。 しかし、抒情はある。甘ったるいセンチメンタリズムでは、断じてない。 人間の魂の、奥底に響く、岩を穿つ清水の如き硬質な抒情が、ある。 少年は、貧困ゆえに高校進学できない。鳩を売っていた行為が露見し、 企業就職も叶わない。少年は、零細町工場の職工となる。 黙々と単純作業を繰り返す、少年の勤労シーンで、映画は終わる。 このラストショットに、大島渚は、次の意志を託したという。 「…つまり、自分を、世の中、だれも重んじてはくれないんですよね。 自分を重んじるのは自分でしかない…彼が、体制のなかに組み込まれなかった場所に いるということは、しかたがないことであり、なおかつ、よいことである。 そのことをよいこととして君は生きなきゃならない。そういう気持をこめて撮った…」 もう一度、言わせて欲しい。大島渚の不在は、日本の不幸である。 (1959年松竹映画、音楽:真鍋理一郎) あなたも、太陽の下へ。 暖まりに、来ませんか。
by blog-blues
| 2006-02-08 19:03
| シネマ夜話
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Comments(10)
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from そぞろ日記
at 2006-02-08 21:53
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from 華氏451度
at 2006-02-09 02:26
タイトル : 日本のマスコミは駄目なのか
昨日、「辺野古における米兵の暴行事件」に関するお知らせを掲載した。この事件について、本土のメディアは(今のところ)全く報道していない。そのことで、日本のジャーナリズム界に対する怒り・憤慨を表すコメントも寄せていただいた。 ……というところから、ほんの少しばかり、「マスコミ」について考えてみた。本当はもっときっちり考えて書かねばならないテーマなのだが、今回は“自分が考えるためのとっかかり”という程度に、いくつかの問題(というほどのものではない。単に、頭の隅に引っかかっていることども)を思いつくまま1つ...... more
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from 華氏451度
at 2006-02-10 03:28
タイトル : 「世論調査」のいかがわしさ
新聞などで、時々「世論調査の結果」なるものを発表している。この調査に協力を要請された経験を持つ方は、大勢おられると思う。私は昨年の衆議院総選挙の前に、生まれて始めて体験した。多分、週末だったと思う。夜の8時か9時、のんびりとコーヒー飲んでいるところに電話がかかってきた。「夜分、失礼いたします。○○新聞の者です」と言葉は丁寧。「総選挙に関して世論調査をおこなっております。お時間はとらせません。ごく簡単な質問にお答え戴くだけですので、ご協力お願いできますでしょうか」。声からすると、20歳そこそこ。アルバイ...... more
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from T.N.君の日記
at 2006-02-10 21:40
タイトル : 飼鶏
気位の高い鶏の産んだ黄金の卵の味が忘れられず、翌年、まだあどけない鶏を一度に五羽飼う事になりました。名前はどれもコッコと名付けました。先代のコッコが泊まった白樺の枝に、一度に五羽も泊まれるはずもありません。かといって、それぞれがお気に入りの木の枝を見つけてねぐらにするような習性も持ち合わしていないようです。先代のコッコが使っていた手狭な鶏小屋に、夜になると五羽仲良く寄り添って羽を休めています。 街までトタンや金網、角材を買いに出掛け、父親と鶏小屋の新設作業に取りかかります。裏山に生えた若木を...... more
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from 晴耕雨読
at 2006-02-11 00:44
タイトル : 米国産牛肉問題 検査・監査の不手際を政争の具とするな
BSE問題に関して農業情報研究所の記事を紹介します。 こちらの記事もご覧下さい。 米農務省BSE対策監査報告 米国のサーベイランスによるBSE発生率推計は信頼できない 以下 米国産牛肉問題 検査・監査の不手際を政争の具とするな 真の問題は食肉産業の構造改変 より転載 中川農相が1月30日の衆院予算委員会で、昨年12月の米国産牛肉輸入再開に際して閣議決定した米国と畜・食肉処理工場の事前査察を行っていなかったと発言、国会が大揺れに揺れている。民主党は、この問題を、耐震強度偽装、ライブドア事件、防衛...... more
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from Make Your Pe..
at 2006-02-11 20:22
タイトル : 紀子さんと雅子さんとジェンダー
誰もが驚いた三人目の政治的?妊娠で、久し振りに紀子さんが脚光を浴びています。朝日は朝刊の一面に「笑顔やわらか」という言葉を添えて写真を載せていましたが、こうしないと読者のニーズに答えられないんでしょうかね・・・。 それにしても、久々にとっくりと見た紀子さんの表情が、美智子さんにそっくりになっていて驚きました。見事に皇室に適応しましたね。適応できず、そのまんまの適応障害になった雅子さんとは対照的です。 紀子さんは社会に一度も出ることなく、学生のまま結婚して皇室に入りました。男女雇用機会均等法...... more
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from 玄耕庵日乗
at 2006-02-12 07:44
タイトル : Under the Sun について諸々
「Under the Sun」プロジェクト参加メンバーの皆様と、私が個人的にお知らせ&ご紹介頂きたい方々にこのエントリーをTBさせて頂きます。 実家を離れていると中々PCに触れず金もかかるし、ケータイからの投稿は1回につき500バイト上限なので中々思うことが書けず、ネカフェのマウスはじゃじゃ馬で、ちょいとストレスがたまっているのですが、「独裁制」さんが執り行って下さった第2回アンケートについてと、その他今思っていることをまとめて書かせて頂きます。 「なんのことだ?」と思われる方もおられるかと思...... more
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from 人間が人間にとってのオオ..
at 2006-02-13 15:27
タイトル : やっぱり その2
斉藤貴男もまた機会均等を重視する論者です。だが、彼によれば、社会階層の低い子どもたちの向上心をうばったのは、ゆとり教育の意図せざる結果(潜在的機能)なのではなくて、もともとの狙いとおりの結果(健在的機能)でした。そのことを、彼は、政策の最高責任者に対するインタビューから明らかにしています。三浦朱門・前教育課程審議会会長は、次のように語っていました。 ・・・できん奴はできんままで結構。戦後50年、落ちこぼれの底辺を上げることばかり注いできた労力を、できる限り限りなく伸ばすことに振り向ける。...... more
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from 雑談日記(徒然なるままに..
at 2006-02-15 07:37
TBありがとうござます。デクノボー組合(?!)の華氏451度です。「愛と希望の街」、私は観ていませんでした。観たい! ところで、やっぱりNHKに受信料払ってあげようかなあ。
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こんばんは~!トラックバックありがとうございました。
大島渚、う~む、深い! >彼が、体制のなかに組み込まれなかった場所にいるということは、しかたがないことであり、なおかつ、よいことである。 そのことをよいこととして君は生きなきゃならない。 今のボクたちは、この“よいことにして”強く生きる決意が、欠けてるのかなぁ? 物質的には世界最高水準にまで満たされてしまって“しかたないこと”を“よいこと”にすることができなくなってるのでは? 常に誰かより得をしなければ、まるで自分が軽んぜられたように感じ、他人が自分と同じ目線にひきずり下ろされなければ、自分が損をしているように感じる。 何か、そんな気がします。 だとしたら、どうしてこうなっちゃたんだろうかなぁ……?
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blog-blues at 2006-02-09 14:14
「華氏451度」へ。観て観て。ホント、凄いっす。それから、NHKは支えていきましょう。本来的に、国営放送は国民営放送であり、民間放送は巨大資本放送なんですもん。9.11の選挙騒動で、いちばんマシだったのがNHK。それが民営化された日にゃ、想像するだに恐ろしい。
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blog-blues at 2006-02-09 14:21
「発掘屋」へ。真摯なコメント、ありがとうございます。できることから、やっていきましょう。僕の場合で言えば、「負け組」にいることをよいこととして生きて行くのだあ!
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前ちゃん
at 2006-02-10 19:17
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「愛と希望の街」しっかり見ましたよ~ん!興味深く見てました。
「青春残酷物語」も何故か見ちゃいました。 こう言う映画は恐らくもう作る人居ないでしょうね。 何れもあまりにも手法が直接的で驚きましたけど。 パラボラアンテナ設置してBS1・2見てますけど、 NHK受信料って払うもんなの??
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blog-blues at 2006-02-10 22:15
「マエちゃん」へ。おう、観ましたか。歯応えあり過ぎて、歯が折れそうになるでしょ。そこが、貴重なんっすよ。受信料は払ってあげてください。別に僕はNHKに義理があるわけじゃないけどね。国営放送は、本来、国民営放送だと考えて。NHKまで民放並みのコンテンツになったら、日本のテレビ文化は、もうご臨終です。
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uts_eqt at 2006-02-12 21:43
お世話になっています。TBで世論調査・TBで意志を表明のUnder the Sun -EQT- です。
現在、「福沢1万円札続投について」のアンケートを実施中です。 http://utseqt.exblog.jp/737265/ 一読後、よろしければご参加頂ければ幸いです。
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qkygh at 2006-02-13 10:35
リチャード・ライト・・・
まさかエキサイトで、彼の名前を目にするとは思いませんでした。 ライトやボールドウィンなどのアフリカ系アメリカ文学が好きなぼくは、なんだかメチャクチャうれしいです!といっても差別問題に詳しいわけじゃなく、家にあったボールドウィンの『次は火だ!』を読んじゃったせいなんですが・・・ でも、やっぱり次は火だ! ファイアー! と、いつも叫んでから、安タバコにポチッと火をつけるQKという者です。 前フリが長かったですが、はじめまして。 先日は、ぼくのアホBlogにご訪問下さり、ホンマにありがとうございます!リンクまでして下さったのには、もう、何と言っていいか分かりません・・・先ほど、こちらのログを読み出したのですが、Blogーbluesさんの文章は、「テーマがシリアスやけど、どっかトボけてておもろい」エッセイの代表選手やな~、ってシミジミと一気に読ませていただきました。 こんなエラいヒトにぼくのアホBlogを読んでもろたのか~って思うと、恥ずかしくて、どっか旅に出たくなりました・・・ええと、でも、とりあえず、これからもよろしくお願いします!
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blog-blues at 2006-02-13 14:37
「ヒトの目を見て話せない」へ。ナイスなコメント、アリガト。僕もね、これまで読んだ中で「最高のアホBlogである。痴にして知のネバーランドである!」と、あなたのエントリーをコメントまですべて、うわははははは。一気に読んじゃいました。もーこれから毎日、覗きに伺います。よろしく。
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blog-blues at 2006-02-15 12:59
「雑談日記」へ。TBありがとうございます。やっとそちらにアクセスできるようになりました。が、コメントは文字化けしてしまいます。それで、この欄にて、お礼申し上げます。今後とも、どうぞよろしくお願いします。
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