なんという豪華二本立てであろう。今、時代劇専門チャンネルでは、
毎週月曜から金曜まで、「木枯し紋次郎」と「必殺からくり人」が、
踵を接して放映中なのだ。ワオ!
僕は圧倒的紋次郎派で、必殺シリーズの代名詞ともいうべき、
中村主水には、それほど魅力を感じない。しかし、からくり人はちがう。
主水は登場しない。必殺一味を束ねるのは、THE女優山田五十鈴演じる、
花乃屋仇吉であり、劇中十八番の三味や唄を披露してくれる。
堪えられない、贅沢。ザッツ・エンターテイメント!
脇を固めるのは、緒形拳に芦屋雁之助の芸達者。就中、雁之助がいい。
山田五十鈴との絡みは、もう絶品。さらに、ジュディ・オングに、
俺は自民党だ!の森田健作までもが、意外なほどの好演ぶりだ。
メインのライターは早坂暁で、メガホンが蔵原惟繕。
キャスト・スタッフとも堂々たる布陣。そして、耳について離れないのが、
泣きのエンディングテーマ曲「負け犬の唄(ブルース)」。
荒木一郎の歌詞がべらぼうにいい、平尾昌晃の曲も、川谷拓三の歌も、いい。
肺腑を抉る、このドラマの、通奏底音となっている。
全13話中最高傑作の呼び声も高い、名優岡田英次をゲストに迎えた
第2話「津軽じょんがらに涙をどうぞ」は、こんな話だ。
越後柏崎の極貧の漁師が、旅のごぜを殺し金を奪い、
ごぜの連れていた娘の目を潰す。目を潰された娘は母を継いでごぜとなり、
流れ流れて七年、風の便りを頼りに仇を求めて江戸に辿り着く。
金の亡者となった漁師上がりは、奪った金を路銀に三国峠を越え、前橋、深谷と
火付け強盗を重ねながら大金を溜め込み、今は江戸で大名貸しをやっている。
苛まれる贖罪意識から、花火大会の慈善興行を催すが、そこから足がつき、
娘の仇討ちに加勢するからくり人に正体を見破られ、
最期は、娘の恨みの一突きを浴び、絶命する。
「越後から出てこねばえがった…出てこねば…えがった」
と、いまわの際に言い残し。そこに、エンディングテーマがかぶる。
♪~やつれた女の夢をみた 俺のおふくろさ
町じゃみんなが言っていた 俺のせいと
夜更けのバスに揺られ たずねてみれば
もう二度と笑わない 眠りの中
さみしく俺は唄う ブルースを~
近頃辛口のドラマがないとお嘆きの貴兄に、必殺からくり人をどうぞ。